備前焼について

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備前焼とは

多くの書籍やホームページなどの解説では「六古窯(ろっこよう)のうちのひとつで~」とか「無釉(むゆう)で長時間焼き締められた~」と難しい説明が並び、これから備前焼を楽しもうという方には今ひとつピンとこないかもしれませんね。ここでは、難しいことはなしに簡単に備前焼の特徴とその魅力をお伝えします。

温かみのある陶器

一口に「焼き物」と言われている陶磁器も白くツヤツヤした洋食器に代表される「磁器」と、植木鉢や土鍋などから想像される「陶器」に分かれるかと思います。その違いは主に「材料」でして、「陶石」と呼ばれる石を細かく砕いて土としたものを「磁器」、粘土から作られるものが「陶器」になります。簡単に言うと、白くツヤツヤしてて指で弾くと硬い金属音が響くものが「磁器」、その反対に手触りがあり土色をしてて吸水性がある器が「陶器」、こんなところでしょうかね。
もっとも、専門的な見地から見ればずいぶん乱暴な分け方と言えますが、ここは学問的な解釈より「備前焼」を知っていただく場所なのでこれで構わないこととします。
さて、「では備前焼は?」と言えば後者の「陶器」の仲間に入りますが、この粘土から出来上がった質感と手触りが「独特の温かみ」となって現れてきます。

窯変とは

胡麻(ごま)

胡麻(ごま)

燃料に使われる「赤松」の灰が窯の中で舞い上がり、ひとつひとつの作品に降りかかります。
この時に高温にさらされた灰は熔けてしまい作品の表面に付着・溶け込みますが、この時の焼き上がりが、あたかも胡麻を振りかけたように見えることから「胡麻」と呼ばれています。
このとき焚き口に近い(火元に近い)時は付着する灰も多くなり、また高温にさらされた灰は熔けて流れ落ちることもあります。
このように窯の中の位置によってまた、お互いの作品の場所・向き・位置関係なども窯の中の火の流れに影響しそれぞれ「胡麻」の付着具合が変わってくるのです。
胡麻の種類は、「胡麻だれ」、「飛び胡麻」、「かせ胡麻」など焼き上がりにより表情が変化します。

緋襷(ひだすき)

緋襷(ひだすき)

昔は大器を運ぶ際には縄でくくっていたそうですが、縄をはずさずにそのまま窯の中で焼き上げるとその跡が表面に残ったりしました。この時、縄が直接火にさらされていない時(蒸し焼きの状態とでも言いましょうか)の縄が模様となって残ります。
この現象は作品の底や作品を積み上げて重なった部分などによく見られます。
現在では、この模様を意図的に表情として作り出すことが多く、縄の代わりに稲藁を叩いて柔らかくした物を作品に巻きつけて発色させています。
直火にあたらず陰になっている部分で得られる表情から、胡麻ができる状況とは正反対の環境で出来上がるのが特徴です。

桟切り(さんぎり)

桟切り(さんぎり)

作品が燃料である赤松の炭に触れると、土に含まれている鉄分と墨の炭素が結びつき発色します。
もともとは燃料が燃えているそばでよく取れる作品なのですが、現在では意図的に焚きあがりの時に炭を投入してこの発色を出すことがあります。
この窯変は窯の中の状態や炭を投入する量、場所、時期により変化するため作品ひとつひとつの変化が多用しファンの人気も根強いものです。

焚き口付近の作品

焚き口付近の作品

高温にさらされ、薪が直接触れる機会があるなど作品にとっては最も苛酷な環境で焼きあがります。それゆえ割れてしまうものも多々あり、取れる作品数も極めて少ないと言えます。
このような厳しい環境で焼きあがった作品は発色や肌の変化も激しく、ダイナミックな男性的な作品として人気が高いです。
窯出しの際に一番注目される作品と言えるでしょう。

お手入れの仕方

煮沸しておきましょう

煮沸しておきましょう

「備前すり鉢、投げても割れぬ」なんて言葉が伝わってますが、大事に扱っていただきたいのはもちろんのことで、ご購入直後のお手入れにつきましても皆様におすすめしております。
とは言うもののそれほど大層なことではなく、「軽く煮沸」していただければそれでOKです。
やり方は簡単で、まず器を綺麗に水洗いし、器が入る程度の鍋に水を張り(器全体に水がかぶるくらいの量)煮沸するだけです。
ただ注意していただきたいのは「強火でグラグラ煮ない」ということで、それにより器どうしが打ち付けあうのを防ぐことができます。
時間は30分から1時間も行えば十分です。火を止めた後は十分に冷えてから取り出してください。

使い込むほど手になじむ「備前」

使い込むほど手になじむ「備前」
使い込むほど手になじむ「備前」

備前焼はその丈夫さから「生涯の伴侶」と呼ばれることもありますが、備前焼の魅力はそれだけではありません。「須恵器」をルーツに持った、釉薬を使わない素朴な温かさは使い込むほどに焼色に深みが増すようになり、艶も出てきます。
購入直後の備前焼(写真上)は素焼き独特の肌触りで温かみの中にも「若さ」、「息吹」が感じ取れますが、使い込むことにより段々とその表情を変えていくのです。
このように長い付き合いをしながら器を育てていく様子が「生涯の伴侶」と呼ばれる所以かもしれませんね。
食器として使うことを目的に備前焼を御購入された方からみると、確かに高価な買物かもしれません。
「ついうっかり落としてしまったらどうしよう」、「使い続けていくうちに欠けたら勿体ない」、「乱暴にしないように気を使うのは疲れる」、そんな理由で出番が減ってしまっている器たちも少なくないかもしれません。
高価な器は出番が少なく、値段を気にせず手軽に手に入れた器はよく使われる。どんなご家庭でもありがちですが、備前焼は生き物です。そう、「生涯の伴侶」なんです。使えば使うほど色艶が良くなり、器に深みが出てくるんですよね。
高価な値段に迷いながら思い切って買った高級な器よりも、よく使いこまれた「お客様用の湯のみ」のほうが(写真下)味わい深く高級感が出てくるのは面白いですね。
皆様も是非、自分だけの器を育ててみてください。